家の中の柔軟性

トレンド / リアリティ
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Reya Sehgal
12月 17, 2021
皆さんと同じように、私もパソコンを使った仕事をしています。つまり、簡単に自宅から仕事ができる状態なのですが、これは2020年3月になると、役得から容易ならぬ現実に変わりました。私の家は、仕事場、映画館、舞台、ジム、バー、農場など、あらゆる場所となったのです。それは素晴らしいことであり、同時にひどい状態でもあります。今、コロナの最中として3回目の冬を迎えるにあたり、私は感謝の気持ちに溢れています。プリント柄のボロボロの毛布をかけて暖を取り、買ったかもらったかしたまざまな不揃いのクッションにもたれて、木の灰、ドライフラワー、金縁の鏡、ローズクォーツの神々、個人的な年譜など、長い時間と人間関係によって得られた小物が散りばめられた外套を眺めています。本棚はあふれ、植物は垂れ下がり(物によっては枯れ)、家具は寄せ集められ、壁には安物のフレームが並び、所によっては写真、またはプリント、詩など、たくさんの物が掛けられています。私は臆面もないマキシマリストであり、そしてついに私の時代が来たのです。1

10年以上にわたりミニマリズムが憧れの美学として君臨してきた今、さらなる進化を遂げるときが来たのです。さらに多くのものを、より豊かな雰囲気で、幾多もの個性を。心理的な意味があるのです。ミニマリズムは、上昇志向の高いミレニアル世代に受けが良かった考え方です。しかし、2008年以降のノマド的な世界が現実化し、在宅ワークの生活を始めて2年近く経つと、整合性を強調するより、むしろ人々は自分の家が快適で住みやすく、自分の存在を肯定する物で満たされるのを望むようになっているのかもしれません。完璧とは言えないまでも、喜びの空間ですね。
インテリアデザインのアドバイスを受ける機会が増えている状況から、ソーシャルメディアでの家の印象が少し変わり始めているようです。コテージコア(コテージとコアを合わせた造語)は、パンデミック初期にTikTokとPinterestを席巻し、Googleではミニマリズムの検索回数を上回り、家庭生活の新しい、ノスタルジックなビジョンを構築しました。3「過剰なDIY」のホームデコレーション、安っぽいフェイクフード、バイオフィリックデザイン、雰囲気のあるエモーショナルスペースなどが未来のトレンドとされる一方、ホームデザイン誌はマキシマリズムを検証し、インテリアの今と昔として「たくさんアクセントのある装飾」が語られています。ゲッティイメージズの顧客もそれにならっているかもしれません。ミニマリズムに関連する用語の検索が過去1年間で減少しましたが、「花の壁紙」(41%増)、「家の改装」(80%増)、「コテージコア」(333%増)、「Bohoスタイル」(132%増)、「ムード照明」(64%増)、日本で言うところの「わびさび」(19%増)は増加しており、もちろん「マキシマリズム」(466%増)も増えています。また、爆発的な人気を生み出すTikTokでは、インテリアデザインのインフルエンサーを生み出し、装飾的な壁画やサンセットランプなどの新しいデザイントレンドを次々と世に出し、人々が簡単に美的な贅沢を実現できるツールとなっています。家に閉じこもっている人が、自分の生活を友人やフォロワーに見せたがっていることを理解し、TikTokはMTVと提携して、金持ちと有名人のライフスタイルを紹介するテレビ番組「Cribs」をリニューアルし、すべての人が番組を見られるようにしました。6

ミニマリズムは、建築思想としては少しファシズム的な起源を持つものの、謙虚な姿勢でインテリアデザインや美的欲求を道徳化する基本として、多くの人に受け入れられるようになったのです。7何の関連性もない、真っ白なものです。人気の画像が、このデザインを全面的に押すことは当然のことです。インテリアの画像は、人気のあるビジュアルの10%近くを占め、その多くは白やグレーの壁、白い建具、極端に清潔な空間、そしてほとんど色が使われていないなど、余裕のある空間を特徴としています。しかし、Visual GPSの調査によると、90%以上のアメリカ人が、自分の人生をできるだけ忠実に生きることが重要だと考えており、70%以上は、広告や宣伝の中で自分のライフスタイルに近いブランドの商品を購入したがっているということがわかりました。多くのアメリカ人消費者が、かつてないほど自分の家と深く結びついている今、家のデザインや雰囲気の多様性を表現するのは、豊かな個人的経験の記録のように、ブランドが消費者とつながるのに役立つに違いありません。カタログではない、現実です。
雑多さを見せる
家にいる時間が長いと、「きれいな家にきれいな心」という概念を維持するのが難しくなります。アメリカの親の74%が、ルールが緩くなり家で過ごす時間が増えたため、家の中が「かつてないほど煩雑になった」と回答しています。ある意味、清潔さが道徳的であるという考え方を取り払うことは、特に家事の大部分を担っている女性にとっては、自由への発想と言えます。多少の乱雑さは普通なだけでなく、自由な発想や感覚を可能にする心地よさにもなるのです。また、「こんまりメソッド」が功を奏した人もいる中で、特にパンデミックという現実に生活を中断された人々にとって、長い時間をかけて蓄積された物に気持ちを寄せることは、安心感の象徴となり得ます。10 ミニマリズムが豊かさを表すとすれば、マキシマリズムや雑多さは、その人の社会経済的地位、継承、個人的な愛着をより強く反映するものかもしれません。
撮影セットとしての家
Zoomコールやセルフィー、TikToksなど、私たちの生活状態が映される機会が増し、自宅は今や背景であり、撮影セットであり、個人のブランドを表すものとなっています。従来の肖像画のように、その人を取り囲む物がその人を物語るように、今日のセルフィ―には、ソーシャルメディア上で流行るための個人の嗜好品が含まれています。11 スタイルインフルエンサーが紹介する家は、「意のままに多様で、自己表現に酔い、物であふれ、散らかった寝室を整える必要はなく、生活の証として飾っている場所」となっています。12 本棚の配置や物好きなメンフィススタイルのアバンベーシックな家具、あるいは意図的に乱雑な美学など、家は事実上ホームスタジオであり、優れた自己認識のあるプロダクションデザインは、ソーシャルで大きな支持を得るためには不可欠です。13
文化的特殊性
異文化の食べ物にスポットを当てることの重要性については、別の記事で書きましたが、家庭空間でも同じことが言えます。同じような空間に住む、さまざまな経歴を持つ人々が暮らしている様子を見せるのは、いわば美の基準を平等にしていることとなります。しかし、そうするとかえって特異性の美を否定してしまうのです。家の中にある物には、その人の生い立ちや人間関係、自身の文化が反映される場合が多いのです。2010年代の統一されたミニマリズムを超えたビジュアルを選択することは、非常に個人的で、自分自身のために生き、呼吸し、創造することで、文化的な美学を語ることになるのです。
参考文献
[1] The new maximalism (Vox)
[2] The Duality of Interior Design TikTok: Accessibility and Consumption (MyDomaine)
[3] Once upon a time, there was cottagecore (Vox); Searches for 'cottagecore' vs. 'minimalism' on Google Trends
[4] Interior design trends 2021 (Homes & Gardens); These Are the Biggest Home Decor Trends of 2021 So Far, According to Designers (Apartment Therapy); Extreme D.I.Y. for Home Decor (NY Times); Fake Food is Trendy Again (NY Times); Biophilic Design (Pinterest); Emotional Escape Rooms (Pinterest)
[5] The best interior designers on TikTok for all your home inspo needs (Cosmopolitan); TikTokers Are Painting Shapes on Their Walls (MyDomaine); The Most Popular Interior Design Trends on TikTok Reveal What Your Youthful Clients Might Be Into (Architectural Digest); Every Hour Is Golden Hour With These Sunset Lamp Projectors From TikTok (Popsugar)
[6] TikTok and MTV's #MyCrib challenge shows us how creators are living (TikTok Newsroom)
[7] The Long(ish) Read: "Ornament and Crime" by Adolf Loos (ArchDaily); Minimalism Is Just Another Boring Product Wealthy People Can Buy (The Financial Diet)
[8] US families say their houses are dirtier than they’ve ever been (NY Post)
[9] If Your House Is a Mess, Nature Is Healing(Forge)
[10] What Is the KonMari Method? (The Spruce); The End of Minimalism (The Atlantic)
[11] Portraits with personal objects (Google Arts & Culture)
[12] More Is More: The End of Minimalism (The Walrus)
[13] The ‘Credibility Bookcase’ Is the Quarantine’s Hottest Accessory (NY Times); Unpacking Avant Basic Design (Architectural Digest); "messy aesthetic" (Pinterest)

スポーツにおけるエイジズムへの取り組み