アジア太平洋地域のデジタル・アイデンティティを理解する

トレンド / テクノロジー
travelism
1414724125
Yuri Endo
10月 5, 2023
アジア太平洋地域でテクノロジーの環境が急速に発展し続けるなか、個々が本当の自分をありのままに表現して社会基準を越えていくために、デジタル・アイデンティティへ焦点があてられるようになりました。ゲッティイメージズの消費者調査「VisualGPS」では、オーストラレーシア、東南アジア、香港、台湾、日本にわたり、自己表現への強い傾倒が示されています1。回答者の大多数が、独自のアイデンティティを表現する自由を重視していることから、デジタル上で事業を展開するブランドや企業にとって、多様性を受け入れることが重要な検討事項になったのは明白です。本稿では、デジタル・アイデンティティを扱ってどのようにビジュアル表現を介した体験を形成できるのかを探っていきましょう。

現実世界での好みが仮想世界で本当のつながりを活性化させる
現実とは違う別の世界が台頭し、魅力的な仮想世界が広がっても、実際の世界で時間を過ごすほうが依然として好まれていることが、VisualGPSで明らかになっています。ただし、仮想世界とそれによって得られる機会に対して、気持ちが高まっていることは明白で、関心を示す人の数が増加しています3。こうした本物志向や実体験志向は、多様性を讃えて、人々の有意義なつながりを仮想世界で生み出すための基盤になります。

包括性を育むにあたり、ブランドは、さまざまな背景をもつ人たちによるオンライン活動の様子をビジュアルで扱うことができます。ビデオブログ、ライブストリーミング、ポッドキャストなどの場面で、人種、年齢、能力、背景の異なる人たちを描けば、個人レベルで心に響くビジュアルを生み出せるでしょう。
仮想世界で独創的な表現を可能にする匿名性を理解する
アジア太平洋地域の消費者が、デジタルの世界で見せるさまざまな行為は注目に値します。GWIの調査によると、全体的に見て、アジア太平洋地域の消費者はオンラインだと控えめな態度が少なくなり、自分自身を率直に表現するようです4。ただし、日本では、オンラインで匿名性が好まれる傾向にあります5。おそらく、世間的な期待にとらわれることなく、オンラインで別の人格になるほうが、自由に自分を表現しやすいと感じるからでしょう6。仮想世界の登場によって開かれる世界では、匿名性の強まる可能性とあいまって、オンラインで異なる行動をとる人たちが、より自由に想像力豊かな自己表現を模索して、このアプローチをまったく別次元に引き上げます。

ブランドが、そうした人たちに秘められた独創性を発揮してもらうにあたって、本当の自分、より良い自分、空想のアバターなどを表現する人たちを見せていくという手段があります。個性、才能、願望の自由な表現を可能にするバーチャルな環境をビジュアルで描けば、垣根をなくして人間の豊かな多様性を讃える原動力になり、消費者とのつながりをより有意義に生み出すことができるでしょう。
ユーモアとつながりを織り交ぜる
コロナ禍などの困難に見舞われた昨年、VisualGPSでは、より明るいムードを望む気持ちが明らかになっており、オンラインでアイデンティティを表現するうえで、ユーモアを検討することが大切な要素になっています。

巧みなヒント、遊び心のあるイラスト、気の利いたキャプションなどによって、ユーモアをビジュアルに組み込めば、ブランドにとって、見る人との仲間意識やつながりを育む強力なツールとなります。笑いは世界共通の言語であり、文化的な境界を越えて、見る人にポジティブで魅力的な体験を生み出します。ユーモアを重視するこうした方法は、垣根のない歓迎的であたたかいデジタル空間を作って、気持ちよく自分自身を表現してもらううえで役立ちます。

個人の表現とオンラインでの在り方を取り巻く環境が変化/発展し続けている現在は、ありのままの自分らしさがもつ無限の可能性をビジュアルで描いて、見る人とのつながりを深めるチャンスです。さまざまなアイデンティティが織りなす状況、自己表現、そして、その舞台となるデジタル空間を讃えてみましょう。
出典
[1] Getty Images VisualGPS
[2] Getty Images VisualGPS
[3] Getty Images VisualGPS
[4] Japan: An Unlikely Metaverse Candidate? (GWI)
[5] Connecting the Dots: 2023 Global Trends (GWI)
[6] Bredikhina, Liudmila, and Agnès Giard (2022) Becoming a Virtual Cutie: Digital Cross‑Dressing in Japan
アジア太平洋地域のデジタルに対する態度の違い