サイバーセキュリティ

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Rebecca Rom-Frank
11月 27, 2019
パーカーのフードを被った白人男性がキーボードにかじりつきながら高速でタイピングし、画面上に0と1が目まぐるしく羅列されていくイメージは厳密には間違いではないものの、時代遅れになっています。ハイパーコネクテッド(接続過多)といわれる現代にあって、こうした孤独なハッカーを用いた扇情的なイメージではサイバーセキュリティの奥深さと幅広さを伝えきれません。結果として、ゲッティイメージズで最も購入されている画像はサイバーパンク的な美学から離れ、より色彩豊かで人間味のある、具体的なソリューションに的を絞った ビジュアルにシフトする傾向が見られます。

前述のようなサイバー的ビジュアルは1990年代のポップカルチャーが直接の影響源ですので、今となっては時代遅れに感じられるのも無理はありません。1995年公開の映画『サイバーネット』ではスタイリッシュで心に不満を抱いた若者たちが登場していましたし、画面に浮かぶ緑色の数字というイメージは『マトリックス』に依るところが大きいでしょう。このようなイメージはインターネットがまだ新鮮でなじみのない時代に考案されたものですが、今では人々がよりインターネットに精通しており、サイバーセキュリティに関連するイメージも 更新できるはずです。
ゲッティイメージズにおいては、ユーザーは脅威よりもソリューションを提示する写真に関心を示していることが見てとれます。 2019年、「cybersecurity(サイバーセキュリティ)」というキーワードで検索したユーザー数は132%増加しており、また「information security(インフォメーションセキュリティ)」は157%、「data privacy(データプライバシー)」は159%、「digital security(デジタルセキュリティ)」は171%までそれぞれ検索数が増加を見せています。対照的に、「hacker computer(ハッカーコンピュータ)」での検索は30%の減少を見せています。

各企業は、前向きなビジュアルによってそれぞれのビジネスの脅威感を和らげることができると認識しているようです。サイバーセキュリティ関連企業のHunters.AI(英語サイト)は親しみやすいグラフィックにSFとならびモダンアートからインスパイアされた暖色系のカラーを採用しており、データ保護企業のVaronis(英語サイト)は脆弱性のメタファーとして無防備な裸の男性を使った広告キャンペーンを展開しました。また、Bank of America(英語サイト)はサーバー室で働く専門職の人々の写真を使って‑詐欺を防止する商品を宣伝しています。

それでも、サイバーセキュリティ関連のイメージに旧来型のビジュアルが多く採用されています。2019年にHewlett FoundationとIDEOが行なった研究(英語サイト)によると、コンピュータセキュリティの専門家の人々はフードつきパーカーや回路基板、南京錠、ポップアップウインドウなどの画像はかならずしも彼らの性質や仕事を代弁していないと感じているとされています。彼らはむしろ自分たちのことをイノベーターや防御者として認識しており、そのようなイメージで描かれたいと考えています。同様に、消費者は安心感を感じたいのであり、不安感を煽られたいとは考えていません。 
サイバーセキュリティのイメージに人間味を加えることは、単に現代的に見せられるためだけではなく、より正確なイメージを伝えることにもなります。 
そうした時代の変化を示すサインとして、TVドラマシリーズ『MR.ROBOT/ミスターロボット』では技術的で多くの時間と労力を要するハッキングのありのままの姿を映し、さらには決まりきったステレオタイプを逆手に取っていました。このドラマの主人公はハクティビスト(政治的な意思表示や政治目的の実現のためにハッキングを手段として利用する活動家)であり、サイバーセキュリティ会社で勤務する昼間はフードつきパーカーを脱いでいます。このドラマは攻撃する側・される側の両方のサーバーに人間味を与え、コーディングの興奮と日常生活の美学を拮抗させています。現実世界では、「ハッカー」という単語はより普遍的なものへと変化してきています。技術者に人気イベント「ハッカソン」はイノベーションやコラボレーションを促進していますし、「ライフハック」は日々のちょっとした 自己改善のヒントを示す言葉です。

サイバーセキュリティのイメージに人間味を加えることは、単に現代的に見せられるためだけではなく、より正確なイメージを伝えることにもなります。サイバー犯罪の最もありふれた手口であるフィッシング攻撃は、複雑なコードなどではなく普通のEメールを装って人の弱みにつけこみます。そして、企業がユーザーのデータを収集し、政府が他国の選挙に干渉するような現代世界では、より簡単に理解されるように更新された雰囲気やメタファーをそなえた新しいコンセプトが提示されるべきです。サイバーセキュリティに関連するビジュアルの次なる潮流は、ユーザーがインターネット上で直面するより明確なイメージを描き、そこで利用できるソリューションを提示することになるでしょう。 
人間味のあるテクノロジー