日本のために男らしさを再定義

トレンド / リアリティ
Yagi Studio
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Yuri Endo
1月 7, 2022
女性をいかに表現するかは、私が以前書いた記事の中で、日本の多くのメディアや広告が、女性が共感できる魅力的な女性像を描くことに苦労していることを紹介しました1。実は日本では、男性も同様に暗黙の男らしさのステレオタイプに悩まされ、女性とは異なる種類の生きづらさを経験しているのです。

ゲッティイメージズの中で、過去1年間の日本人男性のビジュアルに関するベストセラーを見ると、「ビジネス」が最も人気のあるテーマになっています。家庭や余暇を楽しむ男性ではなく、仕事に励む男性がずらりと並ぶビジュアルは、ストイックな「サラリーマン」のステレオタイプを反映しています。「夫は働き、妻は家にいる」という、日本家庭の古い概念をそのまま描いたものです。

また、そのような仕事一筋の男性は、女性よりも25%多くビジュアル化されています。映像文化は、残念ながら伝統的な文化の影響を受けているようで、広告やメディアにおいても、「男は肉体的にも精神的にも強くなければならない」「男は誰にも頼ってはいけない」「本当の男は泣かない 」などの有害な「男のルール」から解放されていないのが実情です。
このような圧力は、男性に「有害な男らしさ」という概念を植え付け、ひいては精神衛生に悪影響を与え、女性差別やヘイトクライムにつながる可能性があります。2020年、日本では約21,000件の自殺が報告されており、男性は女性の約2倍の確率で自殺していると言われています2。日本の厚生労働省の調査によると、男性は女性に比べて仕事や職業関連で不安やストレスを感じやすく、問題を相談できる人が職場以外に少ないという傾向が報告されています3。ですから、社会全体が「有害な男らしさ」という概念からいかに解放されるかを考えることが、問題や差別を減らすためにとても重要なのです。
ゲッティイメージズのVisual GPS最新の調査によると、日本の男性消費者の10人に9人近くが、パンデミック時に仕事と家庭の両立のサポートを求めていることがわかりました。実際のところ、日本では男性が子どもの世話をしたり、家事をしたり、家庭の外でマルチタスクをこなす姿が目立ち始めています。広告においても同様に、かつては主婦が洗濯物を広げて干すという表現が多かったですが、今では男性が洗濯や掃除をする画像に変わってきており、ステレオタイプからの脱却が進んでいます。

このような変化は大いに歓迎すべきです。しかし、日本の根強い文化は事実とは異なると理解していない人が多いので、引き続き人びとの認識を変えていく必要があります。日本の育休制度は世界でも有数の充実したものと言われていますが、実際には国民の6%しか利用していないのが現状です4。一方で、男性の育休を柔軟にする法案が衆議院で可決されたことは、前向きな動きかもしれません。しかし、社会が作り出したこの新しい育メンの在り方が、「育児をしない父親は許せない」「男性はみんな家事をすればいい」など、新たな生きづらさを生まないよう気を付けなければなりません。重要なのは、全体的にバランスをとることです。
日本の男性消費者の10人に9人近くが、パンデミック時に仕事と家庭の両立のサポートを求めていることがわかりました。
また、Visual GPSの調査によると、日本の男性の約2人に1人が、差別を受けたことがあるというのが分かっています。男性への差別理由としては、上から順に「体型」「年齢」「人種・民族」がトップ3でした。(ちなみに、女性への差別理由のトップ3は、上から順に「年齢」「体型」「ライフスタイル」となっています)。また、男性の5人に3人は、メディアや広告に自分が共感できる人が表現されていないと感じており、これは世界平均を大きく上回っています。ここでも、「強い」「体格がいい」「頼りがいがある」といった男性のルールが強調され過ぎて、男性が苦しんでいることがわかります。
このような結果を踏まえて、私たちはどのようにすれば、ポジティブな男らしさの側面を可視化できるのでしょうか。大切なのは、より幅広く男性の感情や行動を表現し、男性が自分自身や他人を思いやりながら働いていることを示すことです。ビジネスシーンでもライフスタイルでも、無意識にステレオタイプな男性像を選んでいないか、常に自分に問いかけることが大切です。

男性が家でしていることを紹介していますか? 
男性が仕事をしながら育児をしたり、家事を分担したり、家の中の他の仕事をしている姿を見せることで、男性を肯定的に見せましょう。

男性が他の人と一緒に働く姿を見せていますか?
職場や家庭以外でも、男性の居場所はあるのです。余暇を楽しむさまざまな場面で、色々な人と時間を共有する男性を見せてください。

多様な体型の男性を映し出していますか?
人の体にはそれぞれ個性があります。心身ともに健康で幸せであることを意識して、さまざまな男性の体型を描写してください。

男性のセルフケアを見せていますか?
セルフケアは主に女性が行うものと思われてきましたが、男性のセルフケアも女性とそう変わらないようです。

自分たちのビジュアルが、どのようにジェンダーの固定観念を強めているのか考えましたか?
また、服の種類や色の選択、スタイリングなどを考えることも重要です。
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