差別によって高まるインクルージョンの必要性

トレンド / リアリティ
Brianna R / 500px
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Jacqueline Bourke
5月 7, 2020
かつてなく簡単に利用できるようになったカメラのおかげで、ビジュアルを取り巻く状況は変化しています。フェイクニュースや過剰な画像加工の問題を契機に、ビジュアルは人々や世界をありのままに描くべきだという機運が高まっています。これにより、ブランドが何をどのように語るかということに対して、消費者の期待はますます大きくなる一方です。Visual GPSの最新の市場調査によると、消費者の3分の2以上が購入先の企業がダイバーシティを取り入れていることを重要視すると答えています。消費者が期待しているのは、自分自身や大切な人、そして日常生活が広告で描かれることです。

この状況がブランドにとって重要なのは、なぜでしょうか? それこそが、購買意思決定要因になるからです。透明性が低く不誠実で偽りばかりのブランドに対して、消費者は反発します。人は、見るものによって判断します。Visual GPSの最新の市場調査では、消費者の33%が過去2年間で自分の価値観に反するブランドの製品を購入拒否したことがあると答えています。さらに、調査した消費者の34%が、自分の信じる理念をサポートしているブランドの製品を積極的に購入するようになったと答えています。

こうした“ニューノーマル”の世界でますます妥当性を増しているのが、リアルな印象とインクルージョンを正しく打ち出すことです。現在、感染症が世界的に蔓延する中、私たちは極めて不確実な状況での生活を強いられています。そんななかブランドの信頼を確立するには、ビジュアル表現を通じた真実性、寛容性、透明性が鍵となります。世界をありのままに見せるインクルージョンを反映したビジュアルを使用する必要があるということを覚えておきましょう。
インクルージョンの時代:個人的な問題
インクルージョンが消費者にとって重要なのは、なぜでしょうか?多くの人にとってインクルージョンは非常に身近で私的なものだからです。調査対象となった消費者の57%は、日常生活で偏見による影響を受けたことがあると答えています。差別によって、広告でインクルージョンを意識する必要性がより高まっています。消費者の51%は、体型や体の外見によって差別を受けたことがあると答えています。他にも、生き方の違いによる差別が37%。ジェンダーによる差別が30%。宗教による差別が27%。人種による差別が25%となっています。市場調査では、差別をより感じているのは若い世代と女性であることもわかっています。

“固定観念を打ち破り、自分自身だけでなく、これまで広告で取り上げられることのなかった人たちを起用する”。認識の変化を促すそうしたビジュアルの力を消費者は理解しています。調査対象となった消費者の80%が、あらゆる体型や外見の人たちを起用することを企業に求めていると答えています。私たちの生きるインクルージョンの時代では、寛容性、真正性(オーセンティシティ)、透明性、そして自分の信じるものを支持することが鍵となります。こうしたことを基準にして、消費者は購入の意思を決定しているのです。

ブランドは、消費者を反映するビジュアルを使用すべきです。それにより、消費者を意識していること、消費者の在り方を受け入れていること、消費者とブランドの交流を歓迎していることを示せるわけです。これは、差別によって影響を受けてきたグループに属す人たちだけの話ではありません。多くの人たちが、購入先となる企業やブランドにインクルージョンの意志を表明してほしいと思っています。では、どうすればいいのでしょうか? そのためには、ありのままのリアルな表現をすることです。
寛容性、真正性、透明性、そして自分の信じるものを支持することが鍵となります。こうしたことを基準にして、消費者は購入の意思を決定しているのです。
努力する価値がある正しいインクルージョン
対象となる消費者は多種多様で、それをすべて反映するのは困難です。ゲッティイメージズがお客様に行うコンサルティングの70%以上は、ダイバーシティとインクルージョンをビジュアルで表現することに関するものです。そこで話し合うのは、インクルージョンを反映したビジュアルの持つ一体感とリアルな印象です。それはつまり、ビジュアルに偽りがないと証明する必要性がブランドにあるということです。昨今、写真のレタッチは人気がなく、多くのブランドがレタッチに対して否定的な姿勢を取っていますが、重要なのは、被写体、フォトグラファー、ビデオグラファー、そして消費者にいたるまでの全工程にも意識を配ることです。例えば、身体障害者を起用する場合、障害のないモデルが身体障害者を装うものであってはなりません。本物を真似て偽るようなことは控えましょう。

努力する価値がある正しいインクルージョン Deloitteによる2019年の調査「The Value of Diversity in Adverrtising(広告における多様性の価値)」では、インクルージョンを反映した広告を掲載しているブランドに、2年間で44%の株価上昇が見られました。Googleが2019年に実施した、インクルージョンを反映した広告に関する調査は、64%の人が、ダイバーシティやインクルージョンを反映していると思える広告を見たあとに、何らかの行動を起こすとされています。ゲッティイメージズでは、Dove、LeanIn.org、Verizon Media、National Disability Leadership Alliance、Refinery 29、AARPとの提携を通じて、当事者を起用してインクルージョンを反映したビジュアルの制作を推し進めてきました。見せかけではない本物の表現を確実にし、体験、視点、ありのままの生活など、今日の消費者の心に響くものが真に交差する様子を示すようにしています。
リアルさとインクルージョンは、メディアや芸術で話題になっているだけでなく、ビジネスの世界でも一層取り上げられるようになっていますが、それは単なる話題ではありません。これをトレンドと呼ぶのは誤算です。多くの場合、広告におけるインクルージョンは極めて私的で身近なことであり、差別経験がその原動力になっています。人と人の違いを認めることは、いまだ実現にいたっていません。自分と異なる人の体験を思いやり、みんなでひとつという認識を全行為に個人レベルとプロレベルで反映させるなど、インクルージョンは今まさに進行している現実の話なのです。メディアに取り上げられることの少ない人たちを世界から切り離された存在として描くような見せかけに終始していては、ビジュアル表現は進化しません。しかし、あらゆる人の交流やそれぞれの生活の様子を、可能な限りありのままに示すことには、広告の方向性を決定づけるだけの影響力があります。

適切なインクルージョンを求めることは、正しい行為であるだけでなく、実現に努めるだけの価値もあるのです。
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