日本においてLGBTQ+のコミュニティを適切に表現するには

トレンド / リアリティ
JGalione
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Yuri Endo
7月 7, 2021
日本社会では近年、LGBTQ+のコミュニティに対する注目度が高まっています。電通ダイバーシティ・ラボが2019年に日本で行った世論調査によると、6万人のうち、少なくとも8.9%がLGBTを自認しています。これは世界の統計と比較しても、ほぼ同等か、それを上回る結果です。

パンテーン・ジャパンパナソニックユニクログーグルなどの大企業による媒体やマーケティングにおいてLGBTQ+のコミュニティを取り上げたビジュアルを多く見かけるようになりました。このことからもLGBTQ+ミュニティへの注目の高さが伺えます。さらに、日本の消費者の77%が、ジェンダーは男女の2種類だけでないことを受け入れるべきだと考えています。これは世界平均の67%よりも高い数値です。Z世代やミレニアル世代では、85%がこの件に同意しており、より強い興味関心があるようです。一方で、日本のメディアではLGBTQ+の人々がビジュアル表現される場合、誤ったもしくは時代遅れの固定観念に縛られる傾向にあります。LGBTQ+コミュニティの人々を余すことなく表現しきれていないのです。
日本の消費者の77%が、ジェンダーは男女の2種類だけでないことを受け入れるべきだと考えています。
Visual GPSのデータによると、日本の消費者の75%が、等身大のライフスタイルや文化、形骸化から脱却するビジュアル表現を望んでいます。様々な人種や背景、外見の人々を広告に登用するだけでは不十分だと感じているのです。しかし、LGBTQ+の権利の認知については、政治の世界と世論の間で隔たりがあるようです。2020年東京五輪大会の開催2か月前に、日本の与党はLGBTQ+の権利をめぐってオリンピック憲章に違反していると非難されています

日本社会とその法制度では、いまだにLGBTQ+のコミュニティが認知されておらず、このュニティのアイデンティティは今も大きく疎外され、法的な権利はほぼゼロに近く状態です。2015年以降、日本の一部の自治体で同性カップルに「パートナーシップ証明書」が発行されていますが、日本では今も同性婚が合法になっていません。日本はG7の中で唯一、職場を含め、性的指向を理由とした差別に講じる決まりがない国であり、また、同性カップルによる養子縁組が合法になっていません。さらに、日本の現行の性同一性障害特例法(GID法)では、トランスジェンダーの人々が法的に性同一性を認めてもらうために、性別適合手術を受けなければなりません。これは国際人権法や国際的な医療の最良事例に反しています。
過去12か月で販売上位になったゲッティイメージズのビジュアル素材を見ると、LGBTQ+の人々が起用されているものはわずか0.5%です。さらに、日本向けのダウンロード上位のビジュアル素材では、通常、LGBTQ+の人々が匿名で描かれるか、単にプライドフラッグで象徴されています。マツコ・デラックスのような人物は日本のメディアで非常に人気が高く、コミュニティの顔となっており、日本の人々はLGBTQ+のコミュニティについて考えるときに、そうした人たちを思い浮かべます。こうした中で、LGBTQ+コミュニティに対する意見が形成されるため、派手でコミカルな存在として描かれます。コミュニティに属する人々のリアルな実態とはかけ離れているのです。日本の映画やテレビ番組、そしてBL(ボーイズラブ)のマンガや小説にLGBTQ+の人物が登場する場合、脚色されたり、見世物のように描かれたりすることが多いです。現代の日本では、『彼らが本気で編むときは、』や『きのう何食べた?』のように、(少なくとも公には)LGBTQ+ではない人気俳優がLGBTQ+の人物を演じています。日本の幅広い視聴者に肯定的に受け入れられ、商業的にLGBTQ+を表現して成功した例であるにもかかわらず、現実に根ざしていないのではないかという潜在的な思いがあります。現在の日本の社会や法律の状況では、こうした表現も「ないよりはあったほうがいい」と考える人々が一定数います。しかし、LGBTQ+の本来の姿について考えるよう視聴者に促さない表現では、ありのままのLGBTQ+のコミュニティを認める社会につながらないのです。

では、日本のLGBTQ+のコミュニティをインクルーシブにビジュアル表現するには、どのようにすればいいのでしょうか? あらゆるジェンダーを余すことなくビジュアルで表現し、その存在が認められるようにサポートするにはどうすればよいのでしょうか? 重要なのは、ライフスタイルの多様な在り方を尊重し、あらゆるアイデンティティにあるLGBTQ+の人々を受け入れ、このコミュニティをより包括的にビジュアルで表現することです。LGBTQ+のコミュニティを無意識のうちに固定観念で表現していないか、常に自分自身に問いかけることが重要です。

日本のLGBTQ+のコミュニティに関するビジュアル素材を選ぶ際には、以下をセルフチェックしてみましょう。
  • 俳優やモデルではなく、実際のLGBTQ+の人たちをビジュアルに起用し、表現していますか?
  • ゲイコミュニティに偏らず、LGBTQ+のあらゆる人々がコミュニティの内外で、ポジティブかつ充実した生活をおくる様子を描いていますか?
  • パートナーではないLGBTQ+の人々が充実した生活をおくる様子を表現していますか?
  • 「ジェンダー」を多角的に表現・解釈できるための余地を残していますか?
  • ビジュアル素材の中でトランスジェンダーコミュニティの人々を表現していますか?
  • トランスジェンダーという事実を超えて、個人の人生経験の側面に目を向けていますか?
  • 男女という二元的なのジェンダー定義にあてはまらない性自認の人々を表現していますか?
  • 自分たちのビジュアルがジェンダーの固定観念を強めているかもしれないと考えたことはありますか?
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