車いす陸上が生み出す輝き

メディアの現状を眺めてみたとき、ほぼすべてのブランドが戦略的にダイバーシティを意識したビジュアル表現を展開していますが、そこで描かれる対象や手法はまだそれほど多様だとは言えません。社会で取り上げられることの少ないさまざまな人たちを包括的に表そうとしてはいるものの、描かれ方はまだまだ一様で、ニュアンスや深みに欠けている、もしくは、その人たちの持つ各自のストーリーをすっかり無視していると感じます。たとえばパラリンピック選手は、感動を与えるヒーローとして以前よりメディアに登場することが増えたかもしれませんが、民族やジェンダー、そして体格はまだまだ一部に限られる場合がほとんどです。アジア系の人や女性となれば、さらに商業用途のビジュアルで描かれていることは少ないでしょう。この現状を変えるために、トレヴァー・ウィリアムズ（Trevor Williams）と私は各スポーツに秀でたパラアスリートに着目して撮影を数回行うことにしました。私たちの撮影した作品は、ゲッティイメージズで拡大を続けている新しい写真ギャラリー “Disability Collection”にさらなる多様性を加えるものです。
 
取り上げられることの少ないこのコミュニティについてふたりで計画を練っていると、ほどなくして闘争心を持って車いすレースの練習に励む10代のグループを紹介されました。これは、女性アスリートに脚光をあてる格好の機会だと思いました。
 
私たちは撮影に際してふたつのアプローチを取りました。ひとつはスナップショット的なリアルな雰囲気を重視したもの、もうひとつはもっと静的で構図がはっきりとしたものにしました。少女たちの気迫は圧倒的で、こちらのお願いにも前向きに取り込んでくれました。そんな撮影でアートディレクターを担当できたことは喜びであり、私たちが制作したビジュアルを誇りに思います。女性たちの持つ気概や熱心さ、そして気質が、運動能力だけでなく、スポーツに対する情熱とともに芸術的に表現されているビジュアルをぜひご覧ください。