Nosotros Collection：ラティンクスのリアルな世界を反映する

官能的。セクシー。艶やか。男気。麻薬王。サービス業者。農民。エキゾチック。曖昧。移民。目立たないその他大勢。
 
現在、ラティンクス／ヒスパニックと呼ばれるラテン系アメリカ人が約5,800万人がアメリカで生活しています。これはアメリカで最大の人種／民族コミュニティにあたります。ところが、メディアに登場する彼らの多くは冒頭に挙げたような一元的で古典的なイメージで表現され、実状と異なる描かれ方をされています。多くの場合、男性や女性、そして、そのふたつに限定されないさまざまなジェンダーが、性的に強調されて描かれます。女性はエキゾチックな遊び相手か家事手伝いとして一括りにされ、男性は筋骨隆々の過度に男性的で支配的な存在としてしか描かれません。それぞれ異なるはずの歴史や物語を無視し、背景のハッキリしないエスニックな友人か、サービス業者、もしくは犯罪者的な役回りとして隅に追いやられることばかりです。

ゲッティイメージズで始まった「Nostros Collection」はラテン系アメリカ人コミュニティを対象にした初のコレクションで、世に溢れるこうした偏ったイメージを刷新することを目的にしています。ゲッティイメージズではこのコレクションを、世の中のビジュアルにおけるラテン系アメリカ人の扱われ方を変えていく、きっかけとなればと考えています。これまでのアメリカのメディアでの描かれ方を形成してきたのは、外側から見たコミュニティのイメージですが「Nostros Collection」が目指すのは、そうしたイメージではなく、コミュニティ内からのリアルな表現です。アメリカのラテン系アメリカ人コミュニティをあらゆるリアルな視点からポジティブに捉えるコレクションであり、豊満な身体、スリムな身体、たくましい身体、さまざまな肌の色、さまざまなジェンダー、年齢を重ねて活き活きとしている人、若くて楽しげな人、権限のある責任者、健康な人、障害のある人など、実にさまざまな人たちが写真に収められています。ラテン系アメリカ人の在り方は決して一辺倒ではなく、それぞれに語られるべきユニークな物語があることを伝えていきます。

こうしたコレクションを始めたとはいえ、世の中のイメージを変えることは簡単ではありません。たとえば世界のどのメディアでラテン系アメリカ人が取り上げられたとしても、その多くは“少しウェーブがかった細い黒髪、凛々しい顔立ち、オリーブ色の肌”というイメージで固定されています。実際には、アフリカ先住民やヨーロッパの先祖を背景に持つ大勢の子孫が含まれているにも関わらず、優先されるのはヨーロッパで理想とされる表現であって、豊かに折り重なる民族の歴史を持つコミュニティのリアリティではありません。

そして、このコミュニティが取り上げられる割合も十分ではありません。2016年に南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム校が発表した研究（英語）では、ラテン系アメリカ人コミュニティが映画でセリフのある役を務めるのは5.8%で、とくに低いことがわかりました。広告で言えば、Chiquita BananaやTaco Bellのチワワのようなあからさまなキャラクターはほとんど登場しなくなっているものの、このコミュニティは引き続き“おまけ”として扱われています。非ラテン系アメリカ人のキャンペーンをスペイン語に翻訳するか、複数の人種を起用するなかに一人ラテン系アメリカ人モデルがいれば大丈夫だろう、という思い込みがあるのです。この多様なコミュニティ独自の文化的ニュアンスが反映されるまでの道のりはまだまだ遠いようです。

しかし、その流れはインクルージョンを見直す流れとともに確実に変わりつつあります。アメリカは、マイノリティ重視の社会へ向かっています。一般的に複数の異なるアイデンティティを持つ人が交わると、必ずしも良い結果にならないという議論があります。しかし、ハリウッド、従来のテレビ、そしてストリーミングサービスでは、多様な在り方に焦点を当てるために、マイノリティの力とユニークな才能を活用することが始まっています。ブランドだけでなくダイバーシティを強く求める広告代理店（英語）も現れています。歌手のビヨンセ（Beyoncé）は、プロジェクトチームがバランスよく世界を反映していないという理由で、数億円相当の案件提案ミーティングから退出したと言われています。そして、わたしたちゲッティイメージズは「Nosotros Collection」を始動しました。

次のプロジェクトやキャンペーンに向けて「Nosotros Collection」の写真をぜひご利用ください。このコミュニティやさらに多くの世界のために、これまでのビジュアル表現を変えていきましょう。